2025年3月 県会長あいさつ
三寒四温の言葉通り寒さと温かさが入り混じっております。
見え隠れする春の兆しに心が躍らせている方も多いのではないでしょうか。
今月は、富士研と方面会の感想、天和会館での学び、そしてスピーチを行う際のコツについてお話します。
2月5日から7日、私は6年連続6回目の富士研に参加しました。静岡県の富士山の麓にある倫理研究所の研修施設で行なわれるこの研修は、全国各地からメンバーが集まり、講義を聞いたりディスカッションを行ったりします。その際に各県の特徴を観察するのが私のクセであり、良いところはどんどん奈良県倫理法人会用に変化させて持ち込もうと考えています。今回は、愛知県、岡山県、長野県の方が多く、中でも愛知県は今回の研修参加者100名ちょうどの内43名と大半を占めました。グループ14班のうち、11班のチームリーダーが愛知県、全体のトップリーダーも愛知県、という愛知県倫理法人会の勢いが見られた回でした。
もちろん、リーダーをすることで学ぶことはたくさんありますが、リーダーをしなくてもチーム体制での研修には大きな学びがあります。多様な視点やアイデアを得たり、問題解決能力を高めたり、チームワークを育んだり、枚挙にいとまがありません。そこでリーダーを努めることで統率力はもちろん、意思決定力や責任感を伸ばすことができるかもしれません。一方、リーダーをしないと何も得られないわけではなく、観察力を養ったり、他のメンバーと協力したりコミュニケーションが容易にできたり、責任が軽減されるため発言のハードルが下がり自由に発言できたりする傾向にあります。つまり、役割に上下はなく、何を学べるかの違いです。私は今回もリーダーはしませんでしたので、よく観察を行うことができ学びがありました。
6回の参加を経て、しみじみ感じたことがあります。それは、富士研は、まるで「生き物」のようだということです。毎回参加者が異なり、多様なバックグラウンドを持つ人々が集まります。そしてコミュニケーションの中で予想外の化学反応が生まれ、毎回新鮮な発見があります。その時その時の参加者それぞれの個性や経験が掛け合わさって研修は毎回変化します。まさに生きた学びの場と言えるでしょう。ですから、皆様方にはぜひ、一度だけでなく何回も富士研には足を運んでいただくことをおすすめします。今回来なかった方は、次回来なかったら損です!と断言します。
次に方面会についてですが、近畿方面2府4県においては大阪府倫理法人会が断トツに牽引力が高く、私共奈良県は大阪府にならえとばかりに大阪府の飛び地として学びに行っております。ありがたいことに大阪府は「近畿は一つ!」と、私共を迎えてくれています。大阪府は、自単会の出席率が高く、会報誌も毎月充実しており、奈良県は学ぶことばかりです。そんな大阪府でも、悩みがないわけではなく、方面会の懇親会において府県会長同士腹を割って話すと其々の府県で大小様々な問題があることを知りました。
しかし、奈良県は私が会長になって約3年、何の大きな問題なくここまでやって来ることができたと気づきました。それは、他の誰でもなく皆さんのおかげです。感謝しなくてはなりません。本当にありがとうございます。
さて、2月23日〜24日は丸山敏雄創始者の生誕地である天和の郷、そして生家の隣に建った天和会館に奈良県倫理法人会の仲間と行って参りました。本当に静かな山間にあり、当時を肌で感じることができる雰囲気でした。創始者の数々の幼少時代のエピソードを知っているからか、今にも子どもの創始者が「そこ」にいて、同じ時間過ごしているような感覚を覚えました。ある日、創始者は池に落ち、自身は運良くすぐに助かり事なきをえましたが、一緒に溺れた従兄弟は生死の狭間を彷徨ったそうです。その間、創始者は懸命に祈り、そのなかで、生かされているという感謝、「おかげさまの気持ち」に気づいたそうです。その話を聞く中で私ももっと日々の些細なことから恩義を感じる必要があると心に刻みました。
近年、タイパ、コスパが重視され、慌ただしく過ぎる日々。たくさんのことに次々広く浅く手を出すことで、多くの現代人は知らないうちに精神的な余裕を喪失しているのではないか。自分だけが得をしたら良いと考えてはいないか。じっくりと思考力や創造性を伸ばすことや、長期的な成長が阻まれているのではないか。そして何より、目に見えないもの、とりわけ「生かされている自分」、「おかげさまの心」、「恩義」を意識しようがないのではないかと考えました。そして、私は「後世にこれらのことを伝えていく使命がある」そう強く決心しました。
ところで、皆さんは、「自分が人前で話すとき、どんなことを意識しているか?」考えたことがありますか。私は、最近、以前から「心を揺さぶられる話」と「頭の中を右から左へと流れていく話」の違いについて疑問に感じていましたが、様々な学びの中から答えが徐々にわかってきました。今月の最後は、その違い、スピーチのあり方についてお伝えして終わります。
今期の奈良県倫理法人会では講話者、実践報告、会員スピーチのスピーチ力を向上させる目的で、様々な取り組みをしています。いつも講話などで話しなれている方面長、副方面長はじめ研究員の方々の講義をきいているうちに気づかされたことです。
私自身は人前で話すことは大好きな人間です。しかし、それが話が上手いかどうかというと、実は私自身はそんなにうまくないと感じているのです。
人前で話すことは、ビジネスパーソンとして大変重要なことです。いくら優れた人材だとしても「人前で話す」ことができなければその値打ちは下落してしまいます。ここで指す「人前で話す」とは、単に漫然と人の前で何かを述べることではありません。「なぜ話すのか」という、「話す目的を明確にしたスピーチ」を指します。聞き手に最も伝えたいことを考え(自分の考えや事実を正確に伝える、聴衆の行動を変えるなど)、自分の思いを凝縮して聞き手の心を動かすという、「目的」を達成させるチカラを持ったスピーチが、上記で示した「人前で話す」ということです。もちろん、スピーチの主旨を考える前に準備(聴衆の属性や人数の把握など)は必須です。
残念ながら、多くの人は、「なぜ、何のために話すのか」という、「話す目的」を置き去りにしがちで「何を話すか」ばかり考える傾向にあります。
「話すこと自体が目的」になり、自分が訴えたい主旨すら忘れて話す内容を考えてしまいます。そして、ただ漫然と自身の経歴を追ったり、難しい言葉を並べるだけで、誰の心にも残らない、何のために話したのかわからないスピーチになるのです。
「なぜ話すのか」と目的を明確にしたスピーチは100人のうち、5人にしか届かないことも往々にあります。きっと話者は「この話が必要とする人だけに届け!」との目的で話しています。そしてそれを欲していた5人の心を、行動様式を変えます。私も100人以上いる中で「この人は私だけのために語りかけてくれている!」そう感じて自分の心持ちが変わったことがあります。きっと話者の目的と化学反応が起きたのでしょう。これは、素晴らしいことなんです。誰にも響かないスピーチと比べ、5人にも影響を与えたのですから。
私たちの多くは中小零細企業事業者ですから、倫理の活動だけでなく、社内スピーチや、新規事業報告、販売先への営業活動など、自ら人前で話す機会があります。
その際は上記のこと―準備を怠らず、「話す目的」、「何のために話すのか」をしっかり考えて下さい。そして、聞き手に最も伝えたいことを軸に話を組み立てて下さい。
さらに付け加えますと、私たちはビジネスパーソンですから数字をうまく使う必要があります。客観的な事実と主観的な評価を区別するのは当たり前のことですが、それに加えて事実を述べる際はマクロ視点で業界の統計結果並びに自社の売上高を具体的な数字でサッと語ることができると信頼感が増します。逆に言うと、これが曖昧であれば脇が甘いとの印象を与えます。
また、皆さんの講話やスピーチ、発表から司会進行などに触れると、「〜と思います」という表現が非常に目立ちます。これは微妙な使い分けがあるでしょうが、基本的に「〜と思います」は自信がなさそうな印象を与えます。逆に断定的な表現を使うと力強い印象を与えます。しかし、どうしても断定できないことを事実のように伝えるのは信用問題に関わりますので、根拠を示した上で、「判断します」、「考えます」、「推察されます」と言い換えるのがビジネスシーンでは適切でしょう。
さて、今回の私の挨拶文はどの程度、どんな方に伝わったでしょうか。いつも、「良かったです」とは言っていただけますが、「どこがこの方にとって良かったのだろう」と思うことがあります。ここまで書いて、感想をおねだりしているような自分を恥ずかしく感じていますが、ともかく、お一人でも実行する方が現れるよう書いております。その人々に届きますように。
春寒のみぎり、皆様くれぐれもお身体を大切になさってください。