2024年7月 県会長あいさつ

いよいよ夏も本番です。私にとっては1年で一番暑さを感じる月です。実際に大変暑い日が続いておりますが、皆さま方に於かれましては熱中症などに気を付けながら日々お元気に過ごされていることと存じます。振り返れば、今年は日本付近への太平洋高気圧の張り出しが例年と比べて弱かったため、梅雨入りは平年よりかなり遅く、近畿地方では夏至にあたる6月21日でした。梅雨入りが遅い年は雨量が多くなる傾向にありますので、安全には十分にご注意いただきたくお願い申し上げます。

 さて、奈良県倫理法人会は今年度も6月19日に年度目標を達成いたしました。しかも、全ての単位倫理法人会(以下単会)で達成という、最高の形で目標に到達できたのも、多くの会員の皆様をはじめ、単会役員の皆様、単会長の皆様、そしてサポート役に徹してくれた奈良県倫理法人会の役員及び事務局の皆様のご尽力の賜物だと深く感謝申し上げます。

 もちろん、ここに辿り着くまでには何度か苦しい時期もありました。特に中間目標が未達の折には、「本当に大丈夫なのだろうか?」と不安に襲われた方も少なからずいらっしゃったことと思います。しかし、どんな苦境に立たされても、私たちの心の奥底には常に倫理の学びがありました。倫理の学びでは常に苦難と対峙したときにどのように乗り越えていくかを勉強しています。そこで、未達成の単会においては直ぐにPDCAサイクルでいうところのC(check)をしていただきました。一般的にPDCAサイクルはP(plan)から回すという常識がありますが、効率よく停滞させずサイクルを回し続けるためには、Cからはじめる必要があるのです。これにより現在の状況や変化を把握し、後半戦へ向けて具体的な計画に取り掛かることができ、目標達成が叶いました。

 この経験を振り返ると、私たちは経営者の団体であるので結果が大切なことはもちろんですが、結果までのプロセスをしっかりと分析することが大切だと分かります。私は常に「結果よりプロセス」、「数字よりストーリー」と口酸っぱく言っておりますので、「またか」と思われる方もいらっしゃるでしょうけれども、良い結果を出すには良いプロセスが必要なのです。一つ一つの小さな経過を大切にして、結果が良くても悪くても振り返り改善する。これが伸びる組織なのです。

さて、今期の奈良県倫理法人会では「形つくり」に取り組んできました。特に組織論を用いながら組織の形態の在りようを皆さまと共に学んで参りました。その中で、今後皆さまの会社に取り入れてはどうかと考えられる組織形態に関しても提案をしました。皆さんを含め多くの中小零細企業では、トップダウンの組織形態を採用し、トップが指示を出し、従業員は指示に従いながら企業目標のために動いて組織は回っていました。意思決定のスピードが早く、大きな決定も容易であるメリットがある反面、組織の総合力は上層部の能力に左右されやすく、上層部が判断を誤ると経営危機に陥ってしまうというデメリットもあります。今の時代にこの縦型の組織形態は我々のような事業主にとっては非常にリスキーです。

一方、私がみなさんに提案したティール組織とは、社長や上司がマイクロマネジメント(部下の行動を細かく管理・チェックする過干渉)せず、目的の達成に向けて進化し続ける横型社会の組織形態です。 近年、注目を集めている組織形態ですから、書店やアマゾンでも簡単に書籍を入手することができます。既に私からきいた皆さまも、この挨拶文をお読みいただいている皆さまも、ぜひ1冊でよいので組織論に関する書物を読んでいただきたいと思います。インターネットの情報は一見「分かりやすい」のですが、端折っていることが多く勘違いするような表現も散見されるため、ぜひ書物を手にし、重要な部分に線を引きながら自分の会社に当てはめながら読み進めてください。

さて、倫理法人会の活動においても、トップダウンの縦社会からティール組織という横社会の組織がこれからの組織運営に大切であります。また、組織論と相まってリーダー像も再考せねばなりません。組織の構成員を率いて目標達成のために必要な能力や考え方を模索する理論をリーダーシップ論と言います。この考えから、現代においては、剛腕なカリスマ的なリーダーの存在よりも、支援型であるサーバントリーダーが必要だと私は考えました。ですから、私はサーバントリーダーの養成が急務であると皆さまに説明し続けてきました。

また、倫理法人会のような非営利組織、そして私共のような中小零細企業で陥りやすい一番の問題はトップダウンによる属人化です。属人化には様々なリスクが伴いますが、今後の企業において属人化の重大な問題の一つに事業承継があります。カリスマ的リーダーシップをもった創業経営者から経営を承継するには相当な時間と労力を要します。承継できずに事業を売却、廃業した企業も少なくはありません。属人化のデメリットを解消するためには、属人化の解消、つまりできるだけ脱属人化することが肝要です。脱属人化を図りながら組織として動く、組織を上手く回すために業務標準化の学びもこの「形づくり」の期間に学びを深めて参りました。

 この学びを落とし込んだ奈良中央準倫理法人会の開設は、8月4日の開設式典を待つのみです。奈良市倫理法人会の皆様は学びを深めるにつれ数字に対する意識が高まってきたように感じられます。自分たちの目標達成の数字だけではなく、奈良市に倫理の活動が広がるために必要なティッピング・ポイントに対する意識です。これは転換点とも言い、物事がある一定の条件を超えると一気に拡がる現象を指します。ティッピング・ポイントに至る原則として、少数者の法則、粘りの要素、背景の力のティッピング・ポイントトそれを説明すると、 少数者の法則は「影響はごく少数の人間から広がる」。そして、粘りの要素は「変化に関するメッセージが強いほど粘り強く広がる」。さらに、背景の力は「変化が起こる文脈によってその影響の波及力が異なる」となります。まさに倫理拡大おいて意識しなければならない原則です。

今期においては、奈良中央倫理法人会は50社で開設するという段階を踏みましたが、来期には必ず100社を達成すると共に正倫理法人会の設立、更には奈良市と合わせて204社突破を目指します。今日この日から心を新たに、奈良市に倫理の活動を広く、深く根付くよう皆さまと一丸になって前進して参ります。

 話は変わりますが、私は立場上、この数か月で全国的に倫理法人会の単会の方々から講話のご依頼を受けております。それぞれの単会にお伺いさせていただくたびに、全ての単会で自らの「色」を発揮した多種多様な取り組みをされているのを目の当たりにし、感激をすることばかりです。講話をしに来た私自身が逆に学びの機会をいただいていることに感謝しております。そして奈良でも良い所は取り入れようと思案します、と同時に思うのです。奈良の各単会らしさは何だろう?と。思えば客観的に自分の携わっている組織を見ることはよほど気を付けなければわかりません。せっかく他から学ばせていただいているのですから、奈良の良い所、改善すべきところを皆さまにどんどんフィードバックしていこうと考えています。

 様々な所で講話を重ねる私ですが、以前、ある倫理法人会の先生から「講話の内容はある程度絞り込んで、同じ内容のものを何度も何度も話すと、新しく見えてくるものがある」と教えていただきました。その言葉を噛みしめながら講話を重ねていくうちに、繰り返すことで自分の人生を何度も振り返ることができるという意味だったのではないだろうか?と考えるようになりました。同じ内容の講話を重ねるたびに、過去の自分を、その時の自分が、自分自身に都合のいいように書き換えていたことや、自分の記憶から消して無かったことにしていた不都合な真実が蘇ってきました。気づかされることは実に多く、時には恥ずかしさと後悔で酷く落ち込むこともありました。しかし、だんだんとその現実から目を背けないように向き合っている自分も現れてきました。ですから、今となって、講話はしっかりと自分と対峙し自身を振り返るため重要な位置づけにあります。

 他の単会で講話をしていて、気づいたことがもう一つありました。それは私の中でとても大きな衝撃でした。「聴者によって自分の講話の内容が変化する」ということです。これは一体どういうことだろうと考えながら帰途につくのですが、なかなか答えが分りませんでした。ある日の早朝、いつものように自坊で事務作業を淡々と片付けている時に、なぜか今までで分からなかった答えが少しずつ見えてきました。聴者の反応と呼応するように私の講話が変化しているのは、聴者の頷きや眼差しなど、私の講話をどういう心持で聴いてもらっているかを自分が肌で、無意識的に感じて、自然と聴者に合わせるように講話の内容や話し方が変化するのではないだろうか。そのような結論に達しました。そしてそのことについてインターネットで検索すると、コミュニケーション関連のサイトに「心理的ストローク」という単語を見つけました。「ストローク(Stroke)」とは、人とのコミュニケーションから得られる精神的刺激で、ある内容を受け手がどう感じるかによって「肯定的ストローク」と「否定的ストローク」に分類されるとのこと。確かに思い返せば、真剣なまなざしで頷きながら聴いて下さる方が多い単会では、調子よく話しをさせていただけていることを講話の途中で自覚します。これがお互いにとっての肯定的ストロークなのでしょう。もちろんその逆もあります。この知識を得てからは講話をしながら聴者の方との肯定的なストロークに目を向けるよう一層配慮しています。

最後に、他の単会で気づいたことをもう1点挙げます。通常、多くの単会で「感謝カード」というフィードバックのための自由記述があります。講話者から聴いた内容について感想や質問といったフィードバックを聴者の方々からいただけます。私は講話をした日には、モーニングセミナーを終えて自坊に戻り、一番にこの感謝カードを読ませていただいて自分の講話を振り返ります。その感謝カードの内容を見ると、真剣に聴いていただいている方が多い単会では感謝カードの内容がきっちりした文章になっていて、着眼点も素晴らしく、かつ質問も多いのです。ものすごく充実した感謝カードを頂戴したことで肯定的なストロークができたように感じることができます。しかし、多くのその感謝カードの中で、私の心が『喜び難い』と感じるパターンが3つあります。1つ目は、論点がずれている感想です。2つ目は「良かったです」といった一言のみの感想です。「どの部分がよかったのだろうか?」「もっと話を発展させてほしい」と贅沢を言ってしまいそうになります。3つ目は「なぜ伝わらなかったのか」と思うような感想で、感想カードを書いた方が私の話を曲解、または誤解されている「感想」です。

良い感想とはどのような物を指すのか。それは大学のリアクションペーパー(講義毎に提出する出席確認と小レポートを兼ねたもの)の書き方が参考になります。要点を述べますと、自分が一番興味を持った部分や疑問に感じた部分を選び、その理由や根拠、そして自分はどう考えたのかを必ず述べることで、きちんとした感想となります。とは言っても、普段から感想はおろか、報告書など実務的な文章しか書いたことが無い人間には難しいのではないかとも感じました。そこで、小論文をはじめとする文章の書き方に関する情報を収集したところ、「初心者は『PREP法』という『お作法』に則って書く癖をつければよい。」と知りました。PREP法とは、Point(結論)のP、Reason(理由)のR、Example(具体例)のE、Point(結論)の頭文字を取ったものです。起承転結で育ってきた日本人には馴染みのない書き方かもしれませんが、先に例を挙げた大学のリアクションペーパー、高校や大学受験の小論文、TOEFLのエッセイパートなど様々なところでは標準的な文章構成だそうです。はじめにくる結論とはメインになるアイディアです。例えば「人は枝葉の見える部分より見えない根の部分を大切にすべきである」といったようなものです。次に理由や具体例で「なぜそう考えたのか」というメインアイディアをサポートする文章を書きます。その際には自分自身の経験や知識などを引き合いに出しつつ具体的に記します。最後は、最初のメインアイディアである結論で挟んで終わりますが、最初に使った結論の文章をそのまま持ってくるのではなく、プラスα添えた方が良いでしょう。例えば「自分にとって最も大切な根にあたる〇〇のもとにより事業のさらなる発展に加え、この経験を人々に伝え倫理拡大をしていく決意です」といった書き方です。

また、文章を書き慣れていない人が多いから一言の感謝カードになるのだと仮定すると、「良かったです」の奥にはちゃんとなぜ良いと思ったのか、その理由は何かなど、書いた方の心の動きが存在すると考えられます。感じてはいるけれども言語化できない、そういう経験は誰しも経験したことがあると思います。私は、感想カードを「良かった」だけではなく、「どうしてそう思ったのか」、「講話を聴いてこれからどうしたいと考えたのか」など自分の中で講話を租借し感想を言語化できるようになることで、倫理を語り拡げたり、自己理解を深めることができる。つまり円滑なコミュニケーションを図るためにも、大変有用だと感じました。今後、皆さまと一緒に、講話を聴く姿勢を見直し、感謝カードの書き方を学んでいきたいと考えていますので、楽しみにしていてください。

最後になりましたが、毎月の会長挨拶を読んで下さる方や講話を聴いて下さった方から、身に余るほどのお褒めの言葉をいただくことがあります。特に「寺尾さんだからできる」と言われることが多いのですが、これは全く違います。私も皆さんと同じ凡夫であり、分からないこと、知らないことがたくさんあります。その中で私が気がけていることは、考え方のヒントや答えを求めつづけてアンテナを張り巡らす、ということです。試行錯誤を続けているとそのうち徐々に自ずと答えの近くに辿りつきます。例えば、友人や知人がその分野に詳しいことが分かったり、「まさにこれ!」という書籍やインターネットの記事に偶然出会ったりするのです。そしてその知識を自分の物にする努力をします。これは皆さんも普段から仕事などで行なっていることだと思います。つまり私もみなさんも同じであり、私たちは伸びしろがたくさんある発展途上であることをくれぐれもご理解いただき、今後とも手を携えて倫理根本に成長して参りましょう。

近頃はより厳しい暑さが続いております。皆さま方におかれましては、くれぐれも熱中症対策を入念にお願い申し上げます。爽快な夏空のような気持ちと晴れやかな笑顔で今月も元気いっぱい倫理推進拡大を楽しみましょう。

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