2024年3月 県会長あいさつ
寒さがまだ残る中、ところどころに草木の芽吹きを感じる今日この頃、梅の香りがほのかに感じられるようになりました。奈良県では大正11年に国の名勝地にされた月ケ瀬梅林にて毎年「梅まつり」が開催され、紅白約1万本の梅の花が咲き誇ります。
梅と言えば、菅原道真が大宰府に左遷された折に、大切に育てていた庭の梅が主人を思うがためにひとりでに大宰府まで飛んで行ったという逸話をご存知の方も多いのではないでしょうか。
また、梅の花ことばは「忠実」、「高潔」、「忍耐」と言われており、私たち奈良県倫理法人会が目指す方向と同じであります。
さて、先月は静岡県御殿場市にある倫理研究所の研修施設にて、経営者倫理セミナーに2泊3日の旅程で参加をしました。私はこのセミナーは、入会以来5年連続5回目の皆勤賞の参加となります。このセミナーは、自己を振り返り、命の源を感じられる素晴らしさがあり、来るたびに忘れていた大切なことを思い出したり、新しい発見があったりします。また、このセミナーに参加している時間は、俗世間と離れ、筆舌に尽くしがたい心地よい時間が流れます。「命の洗濯」とは、まさにこのことだと、心から感じます。
我々倫理法人会の役職者の心得の第一に「セミナー参加者に喜んでいただけるお世話役に徹します」という項目があります。毎年参加しているうちにこの思いが次第に強くなり、今では奈良県から乗り合わせる貸切りバスでの往復の時間には、奈良県から参加される皆様のお世話をさせていただいています。さらに現地のセミナーに於いては全国各地から集った皆様がそれぞれの班に分けられます。ですから、私は同じ班というご縁をいただきました班員の方々がより良い研修成果を得られるよう、すすんでお手伝いをしております。
その研修の中では、「挨拶テスト(チームワークテスト)」と呼ばれる取り組みがあります。同じ班のメンバー一丸となって取り組むそのテストは、単会運営にそのままつながると私は認識しております。全国から集った初対面の人間7~8名が呼吸をあわせ、ピッタリと一致しなければ合格をいただけません。班のチームリーダーに自らがすすんで心を合わせていく。これは、経営者というある種の個性ある人々が集まって行う単会運営、さらに自らの会社に当てはめて考えれば、社員や役員と行う会社経営そのものではないでしょうか。
この話の全貌をこの場で要約することは非常に難しく、おそらく読んで下さる方にも肩こり、眼精疲労をもたらすボリュームになりますのでこのくらいにさせてください。
「富士研の挨拶テストを単会運営や会社経営に活かす」等のタイトルでお話させていただく機会がありましたら、1時間は優に講話ができますので、興味のある方はお気軽にご相談くださいますようお願い申し上げます。
そして、2月には倫理法人会の近畿方面の府県役員や各単会の会長専任幹事が一同に集まる「方面会」が開催されました。参加された人の数だけ思うことはあったかと思います。私自身はといいますと、おかげさまでたくさんの元気をいただいて帰りました。
実は1月の奈良県倫理法人会設立25周年式典終了後、「県会長職はこれでやっと半分、まだあと半分残っている」という重圧を背負って落ち込むことも少なくはありませんでした。しかし方面会で様々な方々の発表を聴いたり、懇親会で同じ立場の方々と会話したりする中で様々なヒントを得ることができ、再度自分自身を奮い立たせ、一回り大きな自分を目指せるような心持でいます。
また、喜ばしいことに、私は方面会終了後から、すでに来期に向けてのスタートを切ることができています。やはり同じ志を持った多くの仲間たちが結集していることは何事にも代えがたい素晴らしいことだと実感しました。
また、奈良県から参加したメンバーの中にも方面会に影響され、その後の心持ちに大きな変化が生じたメンバーもいます。そんな同志と今期、そして来期も一緒に倫理法人会運営を行えることを、大変誇らしく思っています。
ところで、先月は「組織化」つまり「仕組み作り」について、仕組化の思考法を稚拙ながらご紹介したところ、何人かの方からご質問やご意見の類のものをいただきましたので、ここで追記いたします。
人間は放っておくと楽な方に流される生き物です。例えば「できるだけ早く」と言われたら、あなたはどのくらいの時間感覚で考えますか?「今すぐ、この瞬間に」と考える人もいれば「今日中」と考える人もいるでしょう。もしかすると「1週間以内くらい」と思う人もいるかも知れません。人は物事を基本的に自分にとって都合の良いように解釈します。これを認知バイアスといいます。
「できるだけ早く」は「可能な限り早くするように」、といったニュアンスを示す言い回しですが、「今すぐ取り組む」と考える人は少数派でしょう。認知バイアスのある人間という生き物にとってはそれが極めて自然なことなのです。残念ながら人間の脳や身体は嬉々として自ら進んで働くようにはできていないようなのです。ですから、まずはその前提を認識しましょう。自分は言われてすぐ行動に移すことが難しいのだ、と。しかし、人類の中で何割かの人はその壁を乗り越えて大きな成長を遂げ、社会を動かしてきました。そのキーは、「習慣化」という自己革新でした。人類の歴史は、自己革新の連続で社会を形成してきたのです。自然である「楽な流れに身を任せ」を「不自然を当たり前に」して進化、発展してきたのがヒト祖先から現在のヒト、つまり人類なのです。
前置きが長くて申し訳ありません。「仕組み化」の反対はなんだと思いますか?それは「属人化」です。「特定の社員が担当している業務の詳細内容や進め方が、当人以外では分からなくなってしまう状態」を指し、一般的にネガティブな意味で使われます。組織は放っておくと属人化します。属人化するということは「自分ひとりが活躍し、他の人が自分の代わりになることができない状況」を善と考えることです。それが自分の値打ちを高め、独り勝ちできると考える人は多くいます。自分の会社を振り返ってみてください。「出来すぎた人」が存在する。そんな状況はありませか。だとしたら組織は属人化しています。今は、その人のお陰で事業が成り立っていると思うかもしれません。しかし長い目でみたら、「優秀な人が1人いる」=「優秀な組織」という公式はあてはまらないのです。たとえ「優秀な人」が一人もいなくても「チームとして勝てる」のが組織づくりです。
野球を例に上げてみると、剛腕のエースや超大型の4番打者がいる、というチームは総合力で勝てないのです。それどころか、そのエースや4番打者が他のポジションを含めたチーム全体を強化する邪魔になっていることが往々にしてあるということです。ちなみに私の好きな駅伝はチームの総合力を競います。組織化という言葉が分かりづらかったら、駅伝のチームみたいなものか、と思ってください。
また、2000年代前後「カリスマ」という言葉が流行しました。カリスマというのは、元来、キリストやヒトラー、毛沢東など、啓示力や英雄性に対して崇拝される存在でしたが、この時期大きくカジュアルに意味が変わり、「カリスマ美容師」や「カリスマ社長」などがメディアによって創り出され、もてはやされるようになりました。私は当時直感的に漠然とした不安を覚えました。そして今、その答えの輪郭が見えてきたのです。それはカリスマとは「超」がつくほどに属人化であるということです。組織においてその人がいなくなったらその組織は路頭に迷う危険性が非常に高い。風船が割れそうなくらい膨らんでいます。
経営者、つまりトップのカリスマ性で短期的に組織を牽引していくことは不可能ではありません。しかし、組織の持続性や永続性の観点から見ればカリスマ性のあるトップの支配が続けば続くほど中間管理職は育ちません。また、トップのカリスマ性ばかりに求心力が集まると世代交代や事業承継の際に「あの人が退いたから」と、大量の退職者を出してしまうという結果が待ち受けている組織も多々あります。属人化の極めて悪い例だと言えるでしょう。
ですから、たとえ企業のトップである社長であったとしても「組織の中では歯車(替えの聞く存在)」として動き、組織の総合力をあげ、組織として勝ち続けることが重要になってくるのです。
最後に、奈良県倫理法人会は、この時期から次年度に向けての準備に取り掛かります。「段取り八分」と私は社内外で口を酸っぱくして言っておりますが、この段取りの中でいちばん重要な部分が人事です。以前から私は「倫理法人会でお役を受ける意義」について皆様に話を聞いていただきました。そのことに加えて、組織の中で動くことはどのような心持ちが重要なことなのか、今回の挨拶にて私また少し書かせていただきました。よくよく読んでいただき、疑問、ご質問、ご意見、些細なことでもいいのでフィードバックをいただけたら幸いです。
「形作り」の年度として奔走してきた今年度の仕上げとして、今から数ヶ月は次年度の組織づくりに皆さん一丸となって取り組んでまいりましょう。
ここで大切なご案内です。
奈良県倫理法人会では毎週火曜日・水曜日・金曜日の早朝に「モーニングセミナー」と称しまして、経営に関する体験発表型の学びの機会を提供しております。
お気軽に参加でき、共に邁進する仲間もできますので振るってお越しくださいませ。
またこの春先からは倫理経営講演会やナイトセミナーなど様々な夜のセミナー行事も開催すます。興味を持たれた方は、ぜひお近くの倫理法人会に足をお運びいただくか、私たち役員や事務局のメンバーにお気軽にお声かけ下さい。ぜひ一緒に学んでまいりましょう。