2023年4月 県会長あいさつ

あれほど厳しかった寒さも徐々にゆるみはじめ、いつの間にか春爛漫の季節となり、皆様方も賑やかな春の訪れを謳歌していることと存じます。桜の開花情報を見ると平年より早いところが多くなっていて、記録的に早いところもでているとのこと。
私は3月24日の東京出張時に靖国神社参拝をして参りましたが、境内の桜はほぼ満開でした。靖国神社には東京都の桜の開花状況の基準となる「標本木」があります。1966年ごろに標本木として選定されたそのソメイヨシノの枝ぶりはたいしたもので、周囲には支柱が立てられていました。

 私は祖父に「咲いた桜を見て喜ぶなら、咲かせた根の恩を知れ」と教えてもらった記憶があります。似た言葉で「二月の雪、三月の風、四月の雨が美しい五月をつくる」という言葉もあります。(イギリスでは「三月の風と四月の驟雨が五月の花をもたらす」と言うそうです。)
これらの言葉から導き出される教えは、現代人が不可視的な物を感じる力が欠如していることを表しているように思われます。現代的は可視性優位、かつ自分の知っている、本当はごく一部にすぎないことを全てだと勘違いしていることが多くあります。自分では知覚できていない事象、物事の根や陰の部分、そして心という最も見えにくく大切な部分を忘れてはならないということでしょう。
倫理法人会では将にその心について学び続ける貴重な場であります。


さて、私は毎回口を酸っぱくして申し上げておりますが、人口減少社会を迎えた日本では順張りの考え方が通じないことは明確です。順張りとは投資手法の一種で、上昇か下落のどちらか一方向に相場が動いている場合に利益を伸ばしやすくなります。戦後から高度経済成長期を経てバブル期に至るまで日本国民は右肩上がりの考え方に向かって突き進みました。実に順張り一色です。
しかしバブル崩壊を経験し、理屈の上では順張り思考の元では最早先細りどころか生き残ることも危ういと理解していても、行動が伴いません。
つまり順張り幻想は未だ消えていないのです。将に負の遺産であります。

 今必要なのは順張りに対して逆張りの発想です。投資手法で言うと相場がどんどん下落する中で、あえて買いを入れる、もしくは相場がどんどん上昇する中で、あえて売り建てる取引を言います。つまり、逆転の発想をするということです。
例えば人間は未来志向なので何年後には何がどうなって…と、現在から未来へ向かって物を考えがちです。しかし逆張りの発想をするとどうでしょう。時を戻して「江戸時代の商人は一体どのようなことを考えて、いかなる行動をしていたのか?」と文献を辿ってみると、彼らの思想や行動様式から学ぶものがあるはずです。温故知新の精神を持ち続けるようにしてください。

また逆張り思考は、私がいつも強調している「得ることよりも与えることが先行する」に始まる様々な例に当てはまります。

例えば、

①「やる気が出たら動くのではなく、動くからやる気が出る。」

そもそも「やる気」とは何者であるかご存じでしょうか。やる気は、脳から分泌される報酬系ホルモンのドーパミンという神経伝達物質がもたらすことが実証されています。ドーパミンが上手く伝達できなければやる気は出ません。では、どうすればドーパミンがでるのか。一番簡単な方法は、「1分だけやってみる」ことです。やり始めると脳の側坐核という部分からドーパミンがでます。つまり、やり始めることによってやる気が出るのです。

➁「準備ができたら動くのではなく、動きながら準備をする」

こちらも、前出のドーパミンの話と深い関わりがあります。「段取り8割」とはよく言ったもので、事前準備で成否が大きく変わることは多々あり、準備自体が大切であることは否定しません。しかし準備が大切であることと「準備ができたらやる」と言うことは大きな違いがあります。準備が駄目なのではなく「準備ができたらやる」と言っていることが良くないのです。「準備ができたらやる」と言うことは、「準備ができないとやらない」ということ。いつまでもやり始めない自分を正当化しているのです。そんな言い訳をしている暇があればどんな小さなことでもいいからすぐにやり始めへ見ましょう。そのこと自体が準備を急速に進めていきます。

③「金持ちならお金を使うのではなく、お金を使うから金持ちになる」

日本人の多くの人は節約に興味があり、お金を貯めること自体が目的化しています。それでは次の進展はありません。金持ちになる人のお金の使い方を見ると、特に貯まった大きなお金の使い方が違います。例えばお金は貯めたままにせず、どんどん使います。その例が自己投資や大切な人、社会のためへお金を使うことです。そうすれば人間力がアップし、人との親交が深まり、信頼もされ、もっと仕事を得ることができます。そしてさらにお金を稼ぐことができるようになります。使い方さえ間違わなければ、お金は使えば使うほど増えるのです。

④「学ぶから発信できるのではなく、発信するから学べる」

多くの方は学んだこと(インプット)を発信する(アウトプット)という順に囚われていますが、実は、学びはアウトプット(発信)こそが肝要です。現代はテクノロジーの進化により効率的にインプットできるようになりましたが、アウトプットによる学びは発展途上にあります。アウトプットというと「完璧な状態で成果を出す」と考える人が多くハードルが高いと捉えられがちです。しかし、本当のアウトプットは完璧である必要はなく、その場その場で具体的な行動に落とし込んでいきます。また、他者からのフィードバックされることを前提とし自分の考えを発信します。アウトプットの場面は、実務や商談の場、SNSなど多様にあります。ぜひどんな些細なことでもアウトプットし、そこから得られる学びや気づきを活かし、更なるブラッシュアップを行ってより質の高いアウトカム(成果・結果)を獲得していきましょう。

⑤「楽しいから笑っているのではなく、笑っているから楽しくなる。」

これまでに様々な例を挙げてきましたが、これこそが世の中で成功している人の逆張り法則とも言えるでしょう。この名言は心理学者ウィリアム・ジェームズの言葉であり、「アズイフの法則」とも呼ばれます。as ifとは「~のように」という意味の熟語です。つまり「あたかも~な様に振る舞えば、~になれる」という話です。このポジティブ思考は、怒りの感情にも応用できます。怒りを鎮めるために「穏やかな人」のように笑顔で振る舞う。すると笑顔では人は怒ったり怒鳴ったりできませんから怒りを鎮めることができます。幸福になるため「アズイフ」の法則を今この瞬間に試してください。楽しくなるために、笑いましょう。笑顔を作るのが苦手な人は「今日も幸せだなあ」と口に出して言ってみてはいかがでしょうか。幸せそう、楽しそうな人がやっていそうなことを真似してみることは生産的なことなのです。

 このような世間一般の人から逆張ばかりだと一蹴されそうな考えからこそ、次の道が開けてくると私は信じて実践しています。これらの例は、倫理法人会で学ぶ「心の部分」や「根の部分」に直結する成功法則です。現在、様々な苦難に直面されている方、モヤモヤとした形のない不安に悩まれている方こそ、一緒に学んでいただきたいです。どうか、少しの勇気が大きな一歩になることを信じてください。

 花冷えの日もございますので、くれぐれもお体にご留意なされ、さらに皆様方がご活躍されますことをご祈念申し上げます。

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